時間は存在しない | カルロ・ロヴェッリ (著), 冨永 星 (翻訳)
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我々は以下の事実を自明のもとみなす。すなわち、万人は異なった形で進化しており、変わりやすい特定の特徴を持って生まれ、その特徴には、生命と、快感の追求が生まれる。
戦争は、ものではなく一連の出来事である。嵐は、ものではなく出ごとの集まりだ。山の上にかかる雲は、ものではなく風にのって山を飛び越す空気中の湿気の凝縮である。波は、ものではなく水の運動で、波を形作る水は絶えず変わっていく。家族は物ではなく、関係や出来事や感情の集まりだ。では人間はどうだろう。むろん、物ではない。人間は山上の雲と同じように、食べ物や情報や光や言葉などが入っては出ていく複雑な過程であり……社会的な関係性のネットワークの一つの結び目(ノード)、化学反応のネットワークの一つの結び目、同類の間でやり取りされる感情のネットワークの一つの結び目なのだ。
重力の影響で時間の進み方が変わるのはよく知られることだが、宇宙規模で考えると 今現在 自体に時差が生じて 今現在 が機能しなくなる、というところから絶対的な時間が存在せず、我々が時間ととらえているものはエントロピーの増大であると導き、我々の宇宙はあらゆる宇宙のなかにある、たまたまエントロピーが低い状態から始まった宇宙であると説く。トランプの山札を例に人間がエントロピーをとらえられず、その錯覚が時間と感じるものであると説明する。
時間をさかのぼれないのはエントロピーを減少させる宇宙にいないから、という結論になる。